【素材】
(本・記事・章タイトル・著者など)
孫子 作戦篇第二 一~四
【引っかかった点】
(引用 or 要約を1〜3行)
糧は敵に因る
【最初の反応】
(読んだ瞬間に浮かんだ感情・思考)
前回読んだ時は、糧を敵から奪う前提で戦を始めるのでは、危うい。徹底して敵の糧の情報を集めて戦争をやるのか?一歩間違えれば、負けて終わりなのでは?と考えた。
【なぜ引っかかったか】
全体を見て思うのは、まず軍隊というモノの経済への影響である。そこへの視点を欠くと、孫子の言いたいことは見えてこないのでは?と思った。
【今の仮結論】
(今の段階での整理)
まず、一
書き下し文
孫子曰く、凡そ用兵の法は、チ車千シ(ちしゃせんし・戦車千台の意らしい)・革車千乗(かくしゃせんじょう・輜重車千台の意らしい)・帯甲十万(たいこうじゅうまん・武具を装備した兵10万人らしい)、千里にして糧をおくるときは、即ち内外の費・賓客の用・膠漆(こうしつ)の財・車甲の奉、日に千金を費して、然る後に十万の師挙がる。
その戦いを用(おこ)なうや久しければ即ち兵を鈍(つか)らせ鋭(えい)を挫く。城を攻むれば則ち力屈(つ)き、久しく師を暴(さら)さば則ち国用足らず。
夫れ兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈くし貨をツくすときは、則ち諸侯其の弊に乗じて起こる。
智者ありと雖(いえど)も、其の後を善くすること能わず。
故に兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久(こうきゅう)なるをミざるなり。
夫れ兵久しくして国の利する者は、未だこれ有らざるなり。
故に尽く用兵の害を知らざる者は、則ち尽く用兵の利をも知ること能わざるなり。
素直に読んでみる。
孫子は言う。
おおよその用兵の「法」は、戦車千台、輜重車千台、フル装備の兵隊10万、千里も先に糧を送るときは、内外の費用・賓客の為の用意・膠漆の財・車甲の奉が必要で、一日に千金もかかり、その後に十万の軍隊が出来る。
その軍を動員した戦いが長引けば、兵の動きは鈍くなり、鋭さはなくなっていく。
城を攻めれば力尽き、そのままの状態を軍が維持するならば、国の維持に必用な物資も足らなくなる。
それがまた兵を鈍らせ、鋭さを奪い、そして力も財も尽きた時、諸侯はその弊害に乗じて立ち上がるのだ。
智者がいたとしても、その状態から改善することはできない。
故に、「兵は拙速を貴ぶ」とは聞くが、巧久つまり、「長く巧みに兵を維持するのが良い」という状態を見たことがない。
軍隊を長い間行使して、国の利益になることをした者は、存在しない。
故に兵を用いることの害をことごとく知らない者は、ことごとく兵を用いることの「利」を知ることもできないのだ。
一の部分については、そこまで深く考える必要もないように思う。
・戦争は、かなりの費用を必要とするので、長引くと国は疲弊する。
・疲弊すると、他国から狙われる。その状態だと、智者がいても立て直せない。
この事がわかっていないと、用兵の「利」を知ることはできない。
「この事が大前提ですよ。」と言う事なのだろう。
では二に進む。
まず書き下し文
善く兵を用うる者は、役は再び籍(せき)せず、糧は三度は載(さい)せず。
用を国に取り、糧を敵に因る。故に軍食足るべきなり。
国の師に貧なるは、遠き者に遠く輸(いた)せばなり。
遠き者に遠く輸さば則ち百姓貧し。
近師なるときは貴売す。貴売すれば則ち百姓は財ツく。
財ツくれば則ち丘役に急にして、力は中原に屈(つ)き用は家に虚しく、百姓の費、十にして其の七を去る。
公家の費、破車罷馬(はしゃひば)、甲冑弓矢、戟楯矛櫓、丘牛大車、十に其の六を去る。
故に智将は努めて敵に食(は)む。
敵の一鍾(いっしょう)を食むは、吾が二十鍾に当たり、キカン一石は、吾が二十石に当たる。
貴売とは物価が高くなるという意味の様だ。
では素直に読む。
兵を用いるのに巧みな人は、徴兵は一度のみで、糧食も3回も積み増さない。
必用なものは国内の物で賄うが、糧は敵から得る。
なので、軍食は足りた状態にすることができる。
国が軍を送り疲弊するのは、遠い者の為に、遠くに糧を輸送するからだ。
遠き者に遠く輸送すれば百姓は貧乏になる。
軍が近いと物価が上がる。
物価が上がれば、百姓の財は尽きる。財が尽きれば丘役を急にして、力は中原で尽きて、用は家に虚しく、百姓の費、十のうちその七はいなくなる。
公家の費、車は壊れ、馬も損なわれ、様々なものが入用で、十のうち六はなくなる。
故に、智将は努めて敵の物から食べる。
敵の一鍾を食べれば、その価値は二十鍾に当たり、敵のキカン一石は、我々の二十石の価値があるのだ。
これって、かなり具体的だと思った。
①必要なものを一旦しっかり整えて、軍を進ませる。
②遠くの軍に物資を輸送することは国にとってかなりの負担なのでしない。
③軍は近くにあるだけで、近隣地域は物価が上がるので、周辺の民にダメージを与える。なので、その効果を利用して、敵地の民を干上がらせる。
④なので、③の効果の上で、意識して敵の物を奪うように行動する。それは食料であり、人員であり、武器であり、牛であり、馬であり、経済であり、利用できるすべてを奪い利用する。
⑤なので敵地で奪って利用することで、その物は、20倍の価値がある。
これが「善く兵を用うる者」の根本的な考え方であり、軍というモノの性質を利用することなのだと思う。
今回、一番引っかかったのは「糧を敵に因る」という一文である。
最初は、「最低限の準備だけして、あとは敵から奪えばよい」という程度の意味かと思っていた。しかし、前段には、遠方への補給は国を疲弊させ、軍が駐留すれば物価は高騰し、百姓の財は尽き、公家の財政も圧迫されることが丁寧に書かれている。
そう考えると、「糧を敵に因る」は、単に敵の食料を奪うというだけでは説明しきれないように思えた。
敵の一鍾が我が二十鍾に当たるというのも、食料そのものの価値だけではなく、長距離補給を不要にする価値、敵の経済的負担を自軍ではなく敵側に負わせる価値、さらには敵地に存在する様々な資源を自軍の維持に利用する価値まで含めているのではないだろうか。
もちろん、これは現時点での私の仮説である。本文には「糧」としか書かれておらず、この時点で人や武器、経済基盤まで含めて断定することはできない。ただ、「因る」という言葉には、単に「奪う」以上の広がりがあるようにも感じる。
この疑問については結論を急がず、今後『孫子』を読み進めながら、「糧」「利」「勢」「権」、そして「用間」などとのつながりを見て検証していきたい。
そのまま三にすすむ。
まず書き下し文
故に敵を殺す者は怒なり。
敵の貨を取る者は利なり。
故に車戦に車十乗已上を得れば、其の先ず得たるものを賞し、而してその旌旗を更(あらた)め、車は雑(まじ)えてこれに乗らしめ、卒は善くしてこれを養わしむ。
是れを敵に勝ちて強を増すと謂う。
まず、「敵の貨を取る者は利なり」と書き下し文はなっているが、本来は「取敵之利者貨也」とあるので、「敵の利を取る者は貨なり」で私は良いと思う。というのは、二で敵の「利」を奪うことが貴いと説明をしているからです。貨という言葉を調べると「宝、価値あるもの」と出てくるので、やはり「敵の利を奪うものは価値がある」と考えるのが自然だと思いました。
その上で素直に読むと、
故に、敵を殺す者は「怒」です。
敵の「利」を奪うものは価値があります。
故に車戦で車十乗已上を得た場合、その得た者を表彰し、その車の旗を我が国のモノに改めて、自軍のものと一緒に戦闘に利用して、兵卒の待遇も良くして、奪った車も良い状態にさせます。
これを敵に勝ちて強を増すと言います。
と読みます。
孫子は敵を「怒」で殺す者より、敵の「利」を奪って、自軍の継戦能力を高める者を評価するようです。その様に読むと、この章の話はすんなりと理解できるように思います。
続けて四に進みます
まず書き下し文
故に兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず。故に兵を知るのは将は、民の司命、国家安危の主なり。
ここも「民の司命」の部分は、本来は「生民之司命」なので、「生きるの民の命を司る」でも良いのかなと思う。大きく意味は変わらないが。
素直に読むと
故に、兵は勝つことを貴ぶ。長引くことは貴ばない。故に「兵」を知る「将」は、生きる民の命を司り、国家の安危の主なのです。
と読める。
兵を動かすことによる「利」と「害」を理解しないまま、徒に兵を動かすと国家を傾け、亡国へ進むと言う事。戦争は早く効果的に終わらせる算段をつけて始めるべきだと思える章だったと思います。
【行動・意識への接続(1つだけ)】
(明日から意識することを1つ)
糧は敵に因る。これは、戦争だけではない。
私がパーソナルトレーナーとして接客するとき、答えは私の中にはない。
お客様の中に理想があり、その理想に私の技能でどこまで応えられるかというのが、重要だと思う。
トレーニングにもセオリーがあり、現実的なモノは、地味なことが多い中で、お客様の求めるものとそのようなものをしっかりとすり合わせて、答えに近づく。
オフィスワークでも同じで、書類作成一つとっても、自分の中に、やれる手順の理解や、なんとなくここまで進めればいいという知識の蓄積はあっても、答えは自分にはない、まず依頼主の頭の中から、完成図を取り出した方が早い。丁寧なヒアリングが必要だ。
1時間悩むより5分聞いた方が、完成は早い。
もちろん自分の中に答えがあるものはあるだろう。それは悩めばいい。
でも、人間と協力する活動は自分の中に答えが無いもの、またはすり合わせが必要なものが多い。
アイディアもよそから集めた方が早い。
結果として、自分の時間や労力を節約できる。
【保留メモ】
(今は結論を出さない問い)
「利」という部分は構造が見え始めたと思う。ただ「計」は今回はあまり出てこなかったように思う。


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