赤ちゃん力|他責に陥る大人の幼児性

心の戦略

人はどんな境遇でも「被害者」になれる。その能力を、ここでは赤ちゃん力と私は呼んでいます。イライラした時、自分の中の赤ちゃん力が発動していないかを確認することで、自制を促すことができます。

私たちは、どんな境遇からでも被害者になれます。仕事がきつい、家族が理解してくれない、上司が無能、社会が悪い……理由はいくらでも見つかるし、探せば探すほど簡単に増えます。際限がありません。このどこまでも被害者になれる能力を、それこそが、「赤ちゃん力」です。

赤ちゃんは、自分の力で状況を変えられません。「お腹すいた」「眠い」「しんどい」——すべてが他人任せです。だから泣く。だから求める。だから怒る。大人になっても、僕らの中にはこの赤ちゃんがときどき顔を出す。「自分は悪くない」「周りが動くべきだ」「なんで誰も助けてくれないんだ」これらはすべて赤ちゃん力の表れなのです。

イライラが強いとき、たいてい自分の心のどこかで「なんで俺がこんな目に?」というメッセージが流れていると思います。これに気づくかどうかが分岐点です。

赤ちゃんの責任を追及する人はいない。赤ちゃんに仕事を任せる人もいない。赤ちゃんに「自分でなんとかしろ」とは言えない。赤ちゃんはお母さんのお世話で生きています。赤ちゃんの結果はすべて他責です。唯一、他責思考が認められるのが赤ちゃんという存在です。

我々が幼稚な他責に陥っている時、その瞬間の我々は、精神的に赤ちゃんになっている。

気づけたら、そこで一回止まる。「あ、いかん。今の俺、赤ちゃんだったな」と思うだけで、他責から自責へ、幼児性から大人へスイッチが戻ります。

周りを責め続ける人、常に誰かのせいにして怒っている人、何かあるたびに被害者ポジションに逃げ込む人。彼らは能力が低いわけでも性格が悪いわけでもない。ただ単に、精神的に赤ちゃん力が強すぎて自分で立つ心の筋力が育っていないだけなのでしょう。そう理解すると、必要以上に振り回されなくなります。

だって未熟な赤ちゃんなのだから。
そこに理屈は無いのです。どの立場の人でも赤ちゃん力が高くなると被害者になれるのですから。

うんちをした後、気持ちが悪いのを他者に責めていいのは、赤ちゃんだけです。
他人のお尻を拭いてあげる責任は、我々には全くないのです。
自分のお尻を自分で拭くその日まで、見守ってあげる必要もないのです。

自立した大人とは、赤ちゃん力をゼロにする人ではありません。そうなれば理想的ですが、それは不可能です。重要なのは、赤ちゃんが顔を出した瞬間に気づく力と、そこから大人の自分に戻る時間の短さ、この二つだけです。

我々は誰しも弱さを持ち、赤ちゃん力も持っています。でも、その弱さに気づき、自分で立ち上がる心の筋力を磨いていくことができます。筋トレと同じで、精神も鍛えれば強くなる。そして強さとは、周りをねじ伏せる力ではなく、「自分の赤ちゃんを、ちゃんと抱えて前に進めること」なのかもしれません。

泣いている赤ちゃんを目の前にして、「今はできない」は通用しません。目の前にいる自分が責任をもって泣き止ませなければ、いけません。大人は、自分のことを「どうにかして!」とは言わないのです。

その赤ちゃんは自分なのだから、自分の中に答えがあります。
自分のあやし方を自分で見つけていくのです。

街には赤ちゃん化した大人が意外と多い。

  • スマホ歩きの人
    危険への責任を他人に丸投げしている。「避けてくれるだろう」という前提に依存している。
  • 渋滞で怒鳴る人
    渋滞は誰のせいでもないのに怒りを外へ向ける。不快を誰かが取り除くべきだという無意識の甘えがある。
  • 店員に八つ当たりする人
    自分の満たされない感情を人に調整させようとする。赤ちゃんは泣けば大人が動くが、大人は自分の不快を自分で扱わなければいけない。

これはわかりやすい例ですが、わかりやすい事ばかりではないのです。
家で何もしてないのに、親や妻が出してくれるご飯を感謝もせず食べていませんか?
いつも使っているトイレがきれいなのは誰のおかげですか?
ただ、目の前の業務をこなしているだけで、毎月お給料が振り込まれるのはなぜですか?

実は知らず知らずに依存しつつ、感謝すらしていないことはたくさんあるのです。
それは、あなたの赤ちゃん力を高めます。

厄介なのは、これが誰にでも起きるということです。疲れている時、余裕がない時、判断力や自尊心が揺らいでいる時——人は簡単に赤ちゃんへ戻ります。私自身、何度も経験があります。

だから大事なのは、赤ちゃん化した瞬間に気づけることです。「いかんいかん、今の俺は赤ちゃんだな」と思えるだけで、責任感覚は一気に自分へ戻ってくる。

気づいて、立ち直ることが一番大切です。
何物にも依存せず、一人で自立することは不可能です。
それが出来ている人類は、おそらくいない。
人の間と書いて人間。人は集団の生き物です。

大切なのは、生かされていることを自覚して、感謝して、自分もその社会の一員として貢献することでしょう。

成熟した大人とは、幼児性が一切ない人ではない。幼児性が出てきた瞬間にキャッチできる人のことです。

周りのせいにしすぎていないか、環境に甘えていないか、誰かに察してもらおうとしていないか。赤ちゃん力は、放っておくとどこまでも膨張します。だからこそ、イライラした瞬間こそが、そのチェックタイミングです。

我々は誰でも赤ちゃんに戻ってしまいます。だが、そこに気づけるかどうかで、人生は大きく変わります。

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