今、空前のトレーニングブームです。
昭和の終わりに生まれた著者としましては、昨今パーソナルトレーニングで指導するような種目「ベンチプレス・スクワット・デッドリフト」に代表されるようなバーベルを使うトレーニングは、一部の筋肉愛好家がやるものであって、一般的ではなかったと記憶しています。
ボディビルディング自体も、一部の筋肉愛好家によるマニアックな競技であって、一般的な人気のあるものではなかったと思います。
「筋肉は裏切らない」とまで言われるくらい、筋肉を大きくするトレーニングは、昔で考えられないくらい市民権を得ました。
しかしながら、スポーツや武道の世界において、筋肉にフォーカスしたトレーニングは、邪道と言われていることも多く、今でもバーベルでの筋肥大は使えない体になるという意見を持つ方も見受けられます。
実際、我々人類にとって、体を大きくすることがどれほどのメリットがあるのか、デメリットがあるのか
一旦、冷静に考えてみたいと思ったのです。
どの立場でモノを言うのか
一概にトレーニングは役に立つのかどうかを考えるといったところで、「あなたはそもそもどの立場なのですか?」といったところになると思います。
政治の話で恐縮ですが、左翼から見れば左翼的革新的思想が、バランスの取れた中庸なのです。中道なのです。
右翼から見れば右翼的保守思想が中道なのです。
つまり役に立つとか、無駄とか、見る人によって意見は変わるわけですから、著者の立場もまず明確にしておきたい。
私は、10歳のころから筋トレに目覚め、柔道、空手、少林寺拳法、果ては陸上自衛隊でも体を鍛え、使ってきました。
今は、パーソナルトレーナーとして、皆様にトレーニングのすばらしさをお伝えする仕事をしています。
著者としては、生きるために強い筋肉は必要不可欠で、トレーニングによって人生を切り開いていますから、基本的には、筋トレは是と考えます。
ただ、30年近くの年月が流れまして、本当に世の中と筋肉とのかかわり方のスタンスは変わりました。
結論としては、筋肉はファッションになったなと感じています。
著者としては、筋肉は生涯のパートナーでいてほしいと感じています。
人生100年時代とトレーニング
昨今は人生100年時代と言われています。
これからの40代以下の平均寿命は100歳を超えるそうです。
今の中高年が若く見えるのは、生活環境と栄養の変化の結果と言われています。
定期的に何らかの運動をする人は、より一層若く見える傾向があります。
これからの中高年は、60歳を超えたとき、「運動、食事、睡眠」をどれだけ意識したかで、明確に見た目も中身も健康的か否かで差が出てくるでしょう。
この三要素のうちの運動で考えたとき、健康と若々しさを保つための運動としては、特にこだわる必要はないと考えます。
スポーツとトレーニングと時間
しかしながら、社会人は時間が無いので、長時間のウォーキングや、スポーツ競技に参加するなどのアクティビティは、なかなか手が出しづらいのではないでしょうか。
スポーツ競技に参加することによって、筋力や心肺機能や体の操作性の向上があると思います。
一般的なトレーニングで考えますと、スポーツ競技並みのオールインワンの効果を望むことはできません。
筋力トレーニングと心肺機能向上は分けて考える必要がありますし、スポーツ的な実践的な動きは、バーベルトレーニングでは、習得できません。
スポーツのみならず柔道、空手などの武道でも同じことが考えられます。
スポーツの補助としてトレーニングとして、腕立てや自重でのスクワットや、人をおもりとして行うトレーニングも盛んにおこなわれてきました。
日本では、バーベルやダンベルを使ったトレーニングでは体のキレが悪くなるという意見があって避けられてきた傾向があったと思います。
ある意味、自重や人の重さを利用したトレーニングは全身を連動させて行うトレーニングが多いので一理はあると思います。ただ、筋力トレーニングによって筋肉をデカくする利点もあるので、一概には言えなかったと思います。
指導者の不勉強もあったと思います。
昨今のスポーツ指導者は積極的にバーベル等を利用した筋力トレーニングも積極的に取り入れているようですので、今はこのイメージもかなり変わってきていると思います。
筋肥大と競技の関係性
しかしながら、スポーツや武道において、筋力トレーニングにのめり込み、重量を追い求めすぎて、その種目の動作基礎、基本、練習がおろそかになった結果、成績が下がるケースも散見されます。
当然の如く、スポーツや武道には各々の達成目標があり、必要な技術がありますから、特定の条件で筋力が発揮されるだけのトレーニングを追求したところで、工夫が無ければ応用されず、競技に生かされないのです。
例えばパンチの動作ですが、これはまず踏み込む動作があり、腰をひねる動作があり、胸郭と肩甲骨も動き、肘を伸ばし、拳を固める動作を一連の流れでやることによって、パンチという物が発生します。
この連動をスムーズに行い、かつ、足の踏み込みの勢いを拳に伝える事がパンチの鍵になります。
各流派各道場によって考えが違うでしょうが、大枠はここから外れることはありません。
ここを理解せずに、腕だけを鍛える、胸だけを鍛えるなど行えば、体のバランスを崩したり、腕に頼ったパンチになったりするので、結局パンチの目的である、相手に拳を当て、ダメージを与えるという目的が達成できなくなるのです。
筋肉は万能ではありません。
当たり前のように、スポーツや武道の場面でも、筋肉をデカくするために、ジムにこもって筋肥大に時間を費やすことは、解決策にならないことが多いです。
特に、武道やスポーツは「心技体」すべてそろって勝ちに繋がります。
「体」の部分だけをとっても、どのように各競技の目的に沿う形のパフォーマンスを発揮するか、非常に答えのない哲学に沿った問答を繰り返していく必要があります。
もちろん、その哲学の中に、筋トレを取り入れる思考もあるはずです。
著者としては、デカい筋肉ですべてが解決するというわけではないとお伝えしたのです。
トレーニングと目的
先程、筋肥大のトレーニングが必ずしもスポーツでは役に立つわけでなく、目的にあったトレーニングが必要だと申し上げました。
我々、社会人にとって必要なトレーニングについて考えます。
冒頭で、著者は「運動は何でもよい」と申し上げました。
社会人は基本的に自由です。何してもいいのです。時間とお金が許す限りはですが…
なので、社会人がなにか目的を見つけてこうなりたい、ああなりたいと思う限りは、それに沿う形で行動あるのみなので、とやかく言う必要はないのだと思います。
ただ、ここでは、「健康寿命」を伸ばすことを考えていこうと思います。
冒頭で、人生100年時代になったと申し上げましたが、寿命と健康寿命は別物です。
健康寿命とは、健康でいられる期間であって、寿命と健康寿命の間にかなりの隔たりがありますと、せっかく伸びた寿命を闘病生活で過ごさなければなりません。
平均寿命と健康寿命の平均は、現在約8年程度の隔たりがあるそうです。
つまりは、老後8年は誰かのお世話になる可能性が高いわけです。
老人業界ではPPKという言葉があるそうです。
PPKとは「ピンピンコロリ」の略だそうです。
つまり、「ピンピン体が動く間に、コロリと死にたい」という意味だそうです。
実際には、それは理想の理想で、そのように生涯を全うできる人は稀だそうです。
ただ、死へ向かう3段階があるそうです。
- 「歩けなくなる」
- 「排泄がコントロールできなくなる」
- 「食べれなくなる」
この3段階だそうです。
一番初めの「歩けなくなる」という段階を迎えると、もう健康寿命は終わりでしょう。
我々社会人としては、まず「歩ける」ということを継続していくことを目標にしてはいかがでしょうか?
時間が無い中で考える
筋力トレーニングのコスパ
とはいえ、我々社会人は時間がありません。
費用対効果で考えますと、先程あれほど著者がやり玉に挙げた「筋力トレーニング」が良いと考えます。
理由としては、「少ない時間で最大限の効果があるから」です。
端的に言えば、「1日10回3セット」と言われる筋力トレーニングは、数字で効果も確認しやすく、モチベーションも維持しやすいです。※これにこだわる必要はありませんが。
所要時間は長くて30分で終えることができますが、一般的に、自分でジムを持っている方は少ないでしょうから、ジムに通う労力もあるでしょう。なので、これですら、オールインワンの解決法ではありません。
さらに、バーベルのトレーニングですと、効果は絶大ですが、フォームの習得は難しく、知識のない中でチャレンジすると高確率で怪我をします。
時短で考えると、まずはパーソナルトレーナー等の知識ある人に、正しいフォームやセットの考え方を学ぶのが必須となります。
時短で考えなければ、ご自身で研究なさるのはとても良いと思いますし、習得は可能かと考えますが、ここでは、時間のない社会人が最大限の効率で鍛えることを考えてますので、ここではそこは考えません。
一方で、自重トレーニングはどうかと考えます。
腕立てとか何も持たないスクワットとかそういうイメージになります。
実は、バーベルを使ったトレーニング以上に、しっかりと効果が出るフォームの習得は難しいという罠があります。
それでも初心者のうちは良いのですが、負荷が足らなくなった時、レベルを上げるハードルが高いのも特徴で、結局レベルを上げると怪我のリスクも高くなるので、回数を増やすことによってトレーニング負荷をあげがちです。
結果として、トレーニング時間が間延びしがちです。
もちろん移動時間等を考える必要はないわけで、そこは利点です。
ただ、回数が増えていくと精神的な負担も大きくなります。著者は腕立てを毎日200回やっていた時がありましたが、やっぱり数えるのも面倒で、おいそれと始めれられなくなるも自重トレーニングの特徴です。
結局、自重でのトレーニングは手軽な反面、時間がかかる傾向があります。
ジョギング・ウォーキングのコスパ
一方で、ジョギングやウォーキングはいかがでしょうか。
もちろん、とても良い運動だと思います。
ただ、コスパで考えるならば、20分や30分で我慢できるのかどうかは難しいところです。
双方ともに日を重ねて続けていくと、20分、30分程度が一番気持ち良い状態になり、もっとやりたくなるのが、有酸素運動です。
逆に、20分30分程度のウォーキングやジョギングが億劫になる人は、三日坊主になりやすいのも特徴です。
そして、これが一番の問題なのですが、こういった有酸素運動は、よほどハードにやるならば別ですが、筋力低下の予防にはならないことが多いです。
結局、心肺機能や歩く走るの効率性は増しますが、結局とっさの際に踏ん張る力は向上しません。
健康寿命を考えたとき、結局踏ん張る力、転ばない力は別で鍛える必要がありそうです。
これは、補足の情報ですが、あまり筋トレをしないイメージの長距離走の選手ですが、理想の走行姿勢を維持する為に、しっかりと筋力トレーニングを行うようになっているようです。
少なくとも、私が所属していた部隊の持続走訓練隊の選手は、しっかりと目的に合った筋力トレーニングを行っておりました。
衰えと向き合う
残念ながら、我々人類は、年齢と共に衰えていきます。
さらに言えば、先ほど挙げた素晴らしいトレーニングやスポーツなども続けなければできなくなる、能力も落ちていきます。
筋肉はどんな方法であれ、使わなければ衰えていきます。
衰えを緩やかにするということは明確に人生の目標になります。
我々は、人生が長くなる分、その長さも楽しむべきです。
苦しみが長くなることの内容に、トレーニングを人生に組み込みましょう。
冒頭で、「筋肉はファッションとなった」と申し上げました。
筋肉は鍛えると一定の見栄えの良さを得ることができます。
まんべんなく鍛えると姿勢もよくなります。
男性も女性もここから得るメリットは実はかなり多いです。
筋肉を鍛え使う時代ではなくなってきていますが、ファッションとしても生活の味方としても皆様には、筋肉とトレーニングを通じて人生のパートナーとして向き合ってほしいと思っております。
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