序論
「昨今の若者は、和式便所で用を足すことができない。」

そういわれて久しい。
電車の座席にドスンと座る人を老若男女問わず目にします。
当初は「なんて下品な座り方をするのだろう」と眉を顰めましたが、最近はあることに気が付きました。
それは「彼らは、座席へ丁寧に座るために必要な筋力がない」ということ。
家の椅子より低いところへしゃがみ姿勢を維持する能力が失われているということ。
ご高齢の方のみならず、今日本人がしゃがむという能力を失っています。
足腰を鍛える=日本を救う
少子高齢化が騒がれて早半世紀が過ぎようとしている日本で、平均寿命より健康寿命を延ばすことが急務かと思われます。
国庫を圧迫する医療費や、労働者不足が問題視される中で、なるべく平均寿命と健康寿命の差をなくすことが現代日本には必要だと思います。お上に頼ってばかりではいられません。
一応の補足ですが、厚生労働省の定義では、平均寿命とは「0歳における平均余命」であり、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいいます。
日本の将来を考えたときに、ほとんどの人は生涯働く必要があるでしょう。核家族化が進んで、共同体意識も弱いので、助けてくれる人は少ないので、生活は自分が何とかする必要があります。
さらに、医療費が国費を圧迫しています。少子高齢化と共に国の経済規模はどうしても小さくなります。
我々(30代後半)が医療を必要とするときに、どう考えても今の基準での手厚い医療を期待はできません。
医療費負担割合も当然増えています。得られる収入もよほどの優秀さが無い限りは、今の基準より貧しくなるでしょう。
国は我々を守ってくれない可能性があります。
そうした中で、個々人で自分の生活を守る必要があります。
国防や犯罪から身を守る術を学ぶ以上に、「死ぬ直前までなるべく元気でいる」という術が至上命題と我々に降りかかっています。
健康寿命=足腰の寿命
数多くのご老人と接してきましたが、自分自身で家事をしていたり、家庭内で役割をもっているようなご老人は、頭もしっかりしていて元気な傾向があると感じます。
一方で、役割を持たずにのんびりとしている体を動かさないご老人は、体の衰えも早い、結果として弱っていくのも早い傾向があると感じます。
いろいろな状況の高齢者がいらっしゃいますが、共通して言えるのは、転んで足の骨を骨折して入院してから急速に衰えて、寝たきりになることが多いということです。
入院前に頭がしっかりしていたご老人が、入院を経て頭がボケてしまうこともよくあります。
寝たきりによる筋力の低下は、血の巡りを悪くします。血の巡りが悪くなるとどうやらボケにもつながるようです。
歩けなくなり頭もしっかりしなくなったら当然健康寿命は終わりです。
このエピソードで何が言いたいかというと、生活の基盤は、足腰がしっかりしていることであり、また、転ばないように予防する意味でも足腰を鍛えておくことが、健康寿命を延ばすための第一に必要であることの証左であると思っているということです。
自分を守るスクワット
ここでお勧めするのが、スクワットという種目です。
ありきたりですがスクワットです。
スクワットは英語で「しゃがむ」という意味です。
つまりしゃがむことがスクワットです。
しゃがんで立つことがスクワットです。
この本来の意味に立ち返って「スクワット」を考えていただきたい。
巷で「スクワット」と呼ばれているトレーニング種目は実は多数あります。
目的も様々です。ここで「正しい」スクワットを追求するつもりはありません。
人々の生活を守る。自衛できる。
そういった「目的に合った」スクワットをご提案いたします。
「目的にあった」スクワットは、どの段階でも「強い姿勢」のスクワット
老後の備えとして目指す状態は、転びそうになっても踏ん張れる状態です。
これはいくら一日何千歩を目標として歩いても、適応できない境地です。
なぜなら、歩行は膝を曲げなくてもできる行為だからです。
不意に転びそうになった時、必要なのは、膝が曲がった状態で踏ん張る能力です。
そのためには、普段からしっかりしゃがめるし、そこから足の力で立ち上がれる必要があります。
ここでいうしっかりしゃがむとは、和式便所で用を足せる状態の事です。
昨今、骨格的に和式便所で用を足せないという論調がありますが、日本の文化が変わってイス文化が定着して、しゃがむ動作から離れていった結果、しゃがめなくなったのであって、骨格の問題ではないと考えます。
なぜなら人間の骨格が、ここ100年で急激に変化したとは考えづらいからです。
やってない、慣れていないからできない。ただそれだけだと考えています。
若いうちはいいでしょう、肉体労働に従事しない限りはいいでしょう。
しかし、30代から目に見えて体力は落ちていき、足は曲がらなくなっていきます。
加齢を重ねて、気が付けば、踏ん張りの効かないからだが出来上がります。
予防として、しゃがんだ状態から立ち上がるスクワットを週1回10回を目標にやってほしいのです。
運動不足の方は、それだけで様々な能力が向上します。
理に適う理想的なフォームとは
ご提案するスクワットのフォームを解説します。
まず、和式便所を利用するつもりで、足幅を設定してください。肩幅程度だと思われます。
そのまましゃがんでいただくのですが、注意事項があります。
まず、背中を丸めないでください。

つぎに、股関節の付け根から体を前傾させてください。
つまりは上のような体制です。
そのまま、和式便所で用を足す要領で、重心を保ちつつ膝と足首を曲げていきます。
お尻を後ろに突き出してもよいですし、膝がつま先より前に出てもよいです。
一番下まで届けば、そのまま同じ動作で立ち上がります。
その際に、一番下の状態で、背中を丸めないでください。
腰砕けの状態になります。それが癖になると、低い体勢で力が出せなくなります。
一番下まで、おりましたら、立ち上がるのですが、立ち上がるときは、前から肩を押さえつける暴漢がいるイメージを持ちましょう。
上半身を変わらずまっすぐに保ち、肩を押させつけている暴漢の顎へ頭突きするつもりで思いっきりまっすぐ立ち上がりましょう。
これでスクワットが一回できました。
この丁寧なスクワットをまずは5回を目標に頑張ってください。
30代以降の方で、普段運動をしない方はおそらくまともなスクワットはできないです。
出来ないスクワットをやるために
先程、「目的に合った」スクワットをご紹介しましたが、ご紹介したい方々がこの動作をできないことは百も承知であります。
そういう方々こそ、このスクワットに挑戦していただきたいのです。
効果は絶大です。歩行に不安がある方は、これで歩行に自信が付きます。
足回りの筋肉が付きますので、血流が良くなりますので、見た目も若くなります。男性は性に対して自信が付きます。
足腰が強くなることは、生活の様々な活力につながりますし、転倒防止はもとより、自衛に繋がります。
自衛は国防に繋がります。週2回1日10回このスクワットを日課にしていただきたい。
それだけで、日本の健康寿命は確実に伸びるのです。
できない理由は2点
このスクワットができない理由は大きく2点
- 筋力が足りない
- 柔軟性が足りない
シンプルかつ当たり前ですが、以上2点です。
この2点を克服すれば、自衛スクワットはできるわけです。
この2点が足りないがために、自衛スクワットが必要であるともいえます。
出来る範囲からやっていく
出来ないならば、できる範囲でやっていくのが常道です。
しゃがめる範囲でしゃがんでみてください。はじめはそれで結構です。
しゃがもうとした時点でそれはスクワットです。
その際に、背中を丸めて深さを出そうすることは絶対にやめてください。

もし、支えが無いとスクワットの動作ができない場合は、人の肩を借りたり、テーブルに手を置いたりして補助をつけて行ってください。
当初は1日3回、5回でも結構です。
できないことをできるようになるというのは、シンプルに大変なことです。
コツコツとよりこんでいくとしゃがめる幅が広がります。
それが進歩です。
ストレッチもやっていく
曲がった状態を禁欲で体を維持できる自信が付くと、膝と股関節、足首の曲げられる範囲が大きくなっていきます。
ここで、まずはもも裏のストレッチを加えていくと、さらに深くしゃがみやすくなります。
もも裏のストレッチについては以下の記事を作成しました。ご一読ください。
そのほかにも、アキレス腱周りの筋肉のストレッチを行ったりするのも効果的です。
結局は自分なりでよい
ストレッチでもなんでも、お手本を追求しがちですが、本質はそこではありません。
今までの生き方があって今があります。
急に、インストラクターと同じ柔軟性は発揮できません。ストレッチは目的としている筋肉が伸びていればよいのです。
同じように、スクワットの目標は、老後の健康寿命を延ばし、生活を自衛する目的ですから、和式便所で用を足すレベルのしゃがみの深さを目指しますが、到達しなくてもよいのです。
大切なのは、正しい努力を習慣化することです。
まずは、1セット10回をしっかり深くスクワットすることを目標にしましょう。
20回を丁寧にやって、物足りなさを感じたら、トレーニングの負荷を挙げることを考えてもいいですし、維持目的なら考えなくてもいいでしょう。
ただ、深さを追求はしてほしいです。特に初期は必ずやってほしい。
というのは、非常に浅いスクワットは、生活を自衛する筋力を培いません。よろめいたら転んでしまいます。
膝を曲げた状態で、筋力を発揮するのが目的です。
意図を理解してスクワットを楽しんでいただけたらと著者は考えます。
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